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三重豪NZ協会メールマガジン                          

  季刊 サザンクロス三重

         
Southern Cross MIE

2018年夏特別号の2(通号6号の2)
            2018JRPS三重オークランド旅行特集その2
                          2018611日発行

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もくじ

ニュージーランド旅行記 ~ガイドさんの案内編~ 辻本和仁

  

   ツアーでお世話になったバスとガイドさん(手前)

  

     巨木カウリに触れる

ニュージーランド旅行記 ~ガイドさんの案内編~ 辻本和仁

1.はじめに
 27日から11日の5日間、ニュージーランド旅行に行きました。これは、JRPS三重(Mie of Japanese Retinitis Pigmentosa)が主体の旅行に対し、三重オーストラリア・ニュージーランド協会が支援することにより実施されたものです。また、旅行地は、ニュージーランドにおいて20th Retina International World Congress(第20回色変国際世界大会)がオークランドで開催されることにちなんで決定されたものでした。参加者は、JRPS三重会員7名と同行者、支援者を含め、全員で22名でした。
 この旅行中は、私たちの観光案内やサポートや通訳のためとしてガイドさんがついてくれました。そのガイドさんは若い日本人女性で、はきはきとしたとても明るい感じの人でした。“日本語のできる現地ガイドさん”ではなく、“若い女性の日本人ガイドさん”でした。そして、このガイドさんがいてくれたおかげで、この旅が安心安全で、かつ何倍も楽しく過ごすことができたのだと思っています。これから、移動中のチャーターバス内外の様子と、ガイドさんが、移動中のバス車内で話してくれた、ニュージーランド案内の一部を、行程に沿った形で紹介していきたいと思います。

2. 2日目、ニュージーランド初日、28日(木曜日)
(1) 空港から羊ワールドへ
 オークランドの天候は薄曇り、暑いどころか長袖でも過ごせる気温でした。バス車内では、早速ガイドさんが、ニュージーランドの気候、人口、産業、通貨など、この国の概要を案内してくれました。バスは右ハンドルで、道路の左側を走っています。ニュージーランドの車は、日本と同じ左側通行なのです。首都はどこでしょう?と、クイズ形式で聞かれました。昔はオークランドでしたが、オークランドは北の端に位置するため、政府の決定や通達が国の南端地域まで伝わるのに2か月もかかったのです。今のような交通や通信網が発達していなかったからです。それで、国の中央にあるウェリントンに移されることになったのだそうです。
 左の車窓からは、ちょうどスカイタワーが見えてきました。すぐに、ガイドさんが教えてくれます。ニュージーランドのシンボルタワーです。高さ328mの自立式電波塔で、メインの展望台が186mの所にあります。展望台からは、スカイジャンプというバンジージャンプができるようになっています。展望台の周りの手すりのない所を命綱をつけて歩くスカイウオークもあるそうです。そんなのに挑戦する人もいるんですね。
 ニュージーランドといえば、まず羊ですね。“ロムニー”という種類の羊が一番多く飼育されていますが、羊の最高峰、羊の王様と言われている“メリノ”という種類もいます。羊の絵としてよく見かける「ザ ヒツジ」です。グルッと丸まった角とピンク色の鼻が特徴で、モコモコした毛の伸びが早く、白く質も良いのだそうです。ニュージーランドでは、人口より羊の数のほうが多くなっています。
 “キウイ”のお話です。キウイという単語をよく聞きますが、キウイは3つの意味で使われます。ひとつは、国鳥である「キウイ バード」、もうひとつは、キウイバードのお尻によく似た果物である「キウイ フルーツ」、そして、ニュージーランド人のこともキウイとよぶのです。運転手さんも、キウイの人です。国鳥のキウイバードは、絶滅危惧種としても登録されています。長いくちばしを持ち、キウイフルーツのようなチョコレートカラーで、羽のない二足歩行の鳥です。キウイの卵の大きさは、鶏の卵の約4倍もあって、とても大きいのです。雌は、まるでお腹全体で卵を作り、必死の思いで産むという感じです。ところが、雌にとっては、産んだ卵が大きすぎるので、雄が温めることになります。このことから、子育てもして、家事もよくできるというニュージーランドの夫は、「キウイ ハズバンド」と呼ばれるのだそうです。
 海が見えてきました。オークランドは「シティ オブ セールズ」と呼ばれるように、ヨットの保有数が世界一なのです。こちらの人は、セカンドカーを買うような感覚で、ヨット(小型船舶)を所有します。約14万隻が停泊しています。ニュージーランドは、ヨットのF1レースと呼ばれる「アメリカズ カップ」で、過去に2年連続優勝したことがあります。昨年6月の大会で久しぶりの王者奪回をしたため、優勝者が次の開催国を選べるというルールのもとに、2021年のオークランド開催が決定したそうです。2019年のラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック、2021年ワールドマスターズゲームズ、アメリカズカップというように、日本とニュージーランドは、これから忙しくなりますねというお話でした。
 空港から北へ向かって走っています。途中で、長さ約1㎞の「ハーバー ブリッジ」を通りました。この橋は、当初片側2車線ずつの橋でしたが、約60年前に交通量が3倍にも増えてきて、大渋滞を防ぐためとして3車線ずつにする「クリップ オン方式」という工事を行ったのです。その工事を担当したのは、日本の会社だったそうです。
 左側に、「ランギトト島」が見えてきます。この島は、まだ死火山になっていないため、人が住めない無人島になっています。約600年前に、海底火山が噴火してできた島です。風が強いため、バスは速度を落として、安全運転で走っていきます。
 橋を渡り終え、対岸の「デボンポート地区」に来ました。ここはオークランドを対岸から見ることができる位置にあるため、よく売られているポストカードのオークランドの写真は、ここから撮影されたものがほとんどなのだそうです。デボンポートの道路は、“フィッシュボーン”と呼ばれます。一本の太い道路が中心を通っていて、それから出ている道の周りに住宅街があり、行き止まりになっています。街に入るのも出るのもこの太い道路を通らないといけません。もし犯罪が起きた場合は、この太い道の入口を封鎖してしまえば、犯人は逃げられないことになってしまうのだとか。そんな話の時、ちょうどサイレンを鳴らしたパトカーとすれ違いました。偶然ですが、すごいタイミングですね。ちなみに、パトカーは、白い車体に青と黄色の市松模様があり、サイレンの色が赤と青なのだそうです。
 さらに走って「ノースショア」の方に進んで行きます。ニュージーランドには、日本人観光客だけでも年間約10万人が訪れています。バスが走っている郊外の地域は、住宅やマンション建設のための再開発が進められています。
 ここで、私たち参加者の全体としての自己紹介が行われました。座っている座席の位置もわかるように、順にマイクをまわして一人ずつ声を聞かせていただきました。ガイドさんの案内の続きです。現在は、羊から牛にシフトしていく政策がとられているそうです。羊は、毛を刈ってあげないと熱がこもって死んでしまうため、6か月に一度は毛刈りをする必要があり、それだけ手間がかかります。また、絨毯やセーターなど、羊毛製品は、一度購入すればかなり長期間使用できるため、需要が伸びにくい傾向にあります。羊毛の需要と供給のバランスが満たされてきて、遂には供給が多くなるような状況にあります。それで、3代前の首相から、羊から牛へのシフトの政策が取られたのです。今後は酪農中心の国にしていこうということです。これから行く先の景色に牛がとても多く見られるのは、そういう理由があるからのようです。また、ロトルア方面は、酪農農場が多く存在している地域になっています。 乗り始めてから1時間ちょっとで、最初の訪問地「羊ワールド」に到着しました

(2) 羊ワールドからスーパーマーケットへ 
 羊と別れてバスに乗ると、ガイドさんから、旅行中のおやつやちょっとしたお土産として人気のあるお菓子やよく飲まれている紅茶、有名なはちみつなど、代表的な
4つを紹介してもらいました。この後の買い物で探してみてくださいとのことです。予定時刻より少し遅れ気味で、次の目的地であるスーパーマーケット「カウントダウン」に到着しました。

(3) スーパーマーケットからホテルへ
 スーパーマーケットを出て、バスでホテルに向かいます。この時は、翌日の午後に訪れるブラインド・ファウンデーション(盲人協会)での交流会で披露する日本の歌の合唱の練習をしました。また、ガイドさんの説明を聞いたり、質問に答えてもらったりしながら、17時過ぎ、ホテルに到着しました。

3. 旅行3日目、ニュージーランド2日目、29日(金曜日)
(1) ホテルからムリワイビーチへ
 朝930分にホテル出発です。早速、皆さんの元気な声がバス車内に飛び交います。ガイドさんの案内と皆さんからの質問で、バス内は盛り上がりました。実は、キウイバードは、学術的に言うと、世界で一番くちばしが短い鳥なんです、という話題からスタートです。キウイバードは、くちばしのように見える部分の先端近くに鼻の穴があるのです。学術的に言うと、鳥類は、鼻の孔より先がくちばしとされるため、くちばしが短い鳥ということになってしまうのです。言い換えれば、鼻が長いということなのですね。彼らは、一日のうちのほとんどの時間を寝て過ごし、4時間ほどしか起きていません。保護施設の見学コーナーでは、暗くした部屋で飼われていますが、見学に行った時、起きている姿が見られればすごくラッキーということになるんです。夜行性なので目がとても悪いのですが、その分耳がよく発達しています。そのため、見学の時は決して声を上げずに、静かにしてあげないと、驚いて心臓発作を起こして死んでしまうこともあるのだそうです。私は、瞬時に思い付きました。「それをキウイ死(急死)と言うんですね!」。保護施設は、ニュージーランド全土に何か所かあります。自然界でキウイバードを見ることもできないわけではないですが、やはり、自然のキウイバードを見るのは、ほとんど至難の業のようです。現在約4万羽のキウイバードがいますが、そのほとんどが保護施設で飼われており、自然界には少ないからです。もしいるとしても森の中ですし、おそらくまだ眠っているでしょうね…とガイドさんは窓の外に目をやりながら話してくれました。
 オークランドでの生活についての話です。住宅は、家主さんが別の場所に住んでいて、移民や引っ越してきた人が共同で借家を丸ごと一軒借ります。家賃は、週払いです。一週間毎に家賃を支払っていくシステムです。ガイドさんも、シェアハウスに住んでいます。私たちのホテルから歩いて20分くらいの所なのだそうです。周りにも、国籍も男女もばらばらに混じって、一軒をシェアしながら住んでいる人がたくさんいるようです。シェアすることが、若者たちが市街地に住む場合の必須のシステムになっているのです。自分のスペースは、やはりシェアなので、すごくラッキーであれば6畳くらいあったりするし、アンラッキーだとベッド1個だったりします。あとは、キッチンやトイレやお風呂などは、共有スペースです。ガイドさんの場合、家賃は、一週間で180ドルですから、4週間で720ドル、1か月で56万円くらいということになります。オーナーさんによりけりですが、その家賃に、水道代、電気代、Wi-Fi使用料が含まれていたりと、様々なようです。
 次は、給料についてです。現在のニュージーランドの最低時給は、15.5ドルです。1,300円くらいだから、日本よりいいのかな。ニュージーランドの人は、貯金が苦手のようで、貯蓄率は世界でもワーストな方らしいです。なので、銀行としてはお金を預けて欲しいので、金利は日本よりはるかによくなっています。23年前は、1%あったそうです。
 年金は制度が次々変わってきているので一概には言えないですが、多いとはいいがたいようです。それでも、次第に制度がしっかりしてきているので、78円相当に上がってきているとか…。出生率が高まってきていて、人口がきれいなピラミッド型に戻ってきているのが要因とのことです。ガイドさんもワークビザを持っているので、年金はもらえる権利があるそうです。
 医療制度の説明です。保険は、民間のものです。病院は、けがや病気の場合、まず最初に小さなクリニックに行きます。そこから次に大きな病院に行くというように、順序を踏まなければなりません。歯医者ですが、日本まで往復するくらいの治療費がかかるらしいと聞いたりするので、ガイドさんもニュージーランドの歯医者にかかったことはないそうです。大抵日本人は、日本に帰った時に歯の治療をして戻ってくる人が多いらしいです。

(2) ムリワイビーチから昼食場所へ
 カツオドリの営巣地訪問を終えバスに乗ると、ガイドさんからこの後の昼食の案内がありました。余分な時間を省くために、あらかじめ4つのメニューからひとつを選んでおいて、ガイドさんが人数をまとめて注文してくれるのだそうです。至れり尽くせりになってきました。快適です。メニューは、肉を避けたい人のための野菜たっぷりのラザニア、ビーフステーキを使ったオープンサンド、クラッシュしたサーモンとポテトのオーブン焼き、骨付きラムのソテーと生野菜添えです。私は、迷うことなくラムを選びました。ワインのテイスティングの希望者数もまとめてもらいました。
 オーダーが決まると、再びガイドさんの案内と意欲的、積極的な皆さんからの質問タイムになりました。
 ニュージーランドは、ワインでも有名で、その美味しさが注目され始めました。特に、白ワインが甘くてフルーティで美味しいというので有名です。オークランドからフェリーで約40分の「ワイヘケ島」では、イタリアにあるような地中海性気候の島に似ているところから、ワイン作りが盛んです。ワイヘケ島は、ワイナリーの町として有名なのです。
 台風は来ないの?という質問です。日本のように直撃されることはないのですが、台風やハリケーンの残骸のようなものはやって来ます。でも、例えば「台風何号が来ます」とか「ハリケーン キャサリンが来ました」というような放送は特にないそうです。雪は降りませんか?と質問は続きます。ニュージーランドの北島には、ほとんど雪が降ることはありません。冬も5℃を下回ることはないので、やはり住みやすい所なんですね。さらに、地震はどうですか?…。日本ほど頻繁ではないですが、やはり火山国なので全くないわけではありません。そんなやり取りをしているうちに、昼食のお店に到着しました。着きましたね、「ソルジャンズ」。

(3) 「ブラインド ファウンデーション」、オークランド大学、そしてホテルへ
 午後は、この旅のメインイベントである「ブラインド ファウンデーション(盲人協会)」の訪問と交流会、第20回色変国際世界大会の会場となっているオークランド大学のキャンパス散策をしてホテルに戻りました。バスでは、明日の行動予定についての意見交換もありました。

4. 旅の4日目、ニュージーランド3日目、210日(土曜日)
(1) ホテルからファーマーズマーケットへ
 この日は、朝830分にホテルを出発しました。オークランドからバスで1時間ちょっとのマタカナビレッジ ファーマーズマーケット(産直市場)に向かいます。バス車内では、ガイドさんから、朝の挨拶と今日の行程変更の説明がありました。そして、ニュージーランドガイドの再開です。昨日の話で、オークランドにヨットが14万隻もあるという数字は、その所有届の数から割り出されているそうです。中には、使われていない船とか、持ち主のわからない船とかもあるかもしれないようです。
 永住権の取り方の話になりました。ガイドさんのビザは、“ワーク・ビザ(就労ビザ)”です。ガイドさんがワーキングホリデーで来た当時は、まだ緩やかな制度だったようですが、今はとても移民が増えているため、ビザがとりにくくなっているそうです。オークランドには、ニュージーランドの人口の約3分の1が集まっていますが、その人口180万人のうちの40%くらいが移民になっています。移民が急増したことで、201710月末に就任した今の首相が、移民の減数政策を行っています。そのためビザが取得しにくくなっているのです。永住権を取得する方法はいろいろあります。まず第一に、一番手っ取り早い方法として現地の人と結婚することです。“パートナーシップ ビザ”というのをもらいます。第二に、ワークビザで働き、職場で総責任者や指揮官などの重要な幹部に就くことにより社長から移民局に申請してもらう方法があります。この人がいないと会社が潰れてしまうというくらいに、社長が推薦してくれるまでの存在になる方法です。第三に、長期の在住年数を確保しながら、英語力を測定する資格試験でポイントを貯めるなどの方法があります。「トイック」や「アイエルツ」といった資格試験で、永住権取得ポイントのラインに到達することが必要だそうです。
 ニュージーランド人のライフスタイルは、やはり家族が中心です。家族との時間が第一、仕事は二の次といった感じです。仕事の時間に重きを置いてないので、残業をする人はほとんどいません。家族とのディナーがあるからと5時ぴったりに帰る人、デートがあるから帰ると言っていなくなる人もいます。職場に早く行けるからといって、街の中心に住みたいという気持ちは持ちませんし、郊外から車で通うことを苦にしません。今や街の中心は移民であふれているので、現地の人たちは郊外に移り住む人が増えています。昨日行ったクミウ地区などは、街の中心から車で20分くらいの所ですが、新しい住宅が建ってきています。また、会社も、産休・育休をかなり寛大に受け入れています。こういうライフスタイルに関連して、ニュジーランドの首相の辞任や産休にまつわるエピソードも話してもらいました。これについては、大変な一面でもあるが、平和な一面でもありますね…というだけにとどめておきますね。
 また、定職に就くという感覚はそれ程ないです。スーツを着てビシッとしているようなホワイトカラーのオフィスワーカーで溢れているような正社員制度はないに等しいそうです。ほとんど時給制になっています。正社員、アルバイトを問わず時給制です。賃金の支払いは、すべてが週払い制で、2週間払いが普通です。1週間払いの場合もあります。家族の時間第一ということから、逆に休日に働けば、ホリデイペイやダブルペイという特別手当の制度があります。休日に休みたいのに、やむなく働かなければならない場合の休日手当ですね。ダブルペイは、休日に働くと時給が2倍もらえるという制度です。最低でも時給31ドル(約2,500円)になりますね。でも逆に、私たちが休日にレストランで注文すれば、「休日に働いてくれてありがとう」という意味のサーチャージがかかることになります。通常料金の15%ほどの上乗せになります。ニュージーランドにはチップの制度はないのですが、働く側とお客さん側の双方から考えると、それぞれどうなんでしょうか…ですね。26日の火曜日は「ワイタンギ デイ」というニュージーランドの建国記念日で休日でしたが、今回の私たちの旅行は平日ばかりだったので、サーチャージがかかる日はなかったのでした。
 家賃は、必ず1週間払いです。日本のような2年更新とか3年契約といった制度はありません。インターネットにある雛型を参考にしたような契約書にサインをするだけだそうです。敷金や礼金もありません。移民が多いということは、いつ出ていくかわからないということですからね。ただし、ニュージーランド常識として、部屋を出ていく2週間前にはオーナーに申し出る「ツー・ウィークス・ノーティス」という制度があります。他にも、市街地に住んでいる家族が、自分たちの家賃を浮かすために、空いている一部屋を誰かに貸すというケースもあります。ガイドさんは、シェアハウスでインド人とアルゼンチン人と住んでいることも話してくれました。
 次は、牛と乳製品の話題です。ニュージーランドでは、フリージアとジャージーの
2種類の乳牛、アンガスとヘレポートの2種類の肉牛が飼われています。フリージアは、牛乳パックに描かれているような白と黒の乳牛で、乳牛の70%を占めています。主に牛乳用です。ジャージー牛は、薄茶色の牛で、残りの30%です。こちらは、たんぱく質の多い乳をつくるので、ヨーグルト、チーズ、バターといった加工食品用として使われています。アンガスは、真っ黒な牛です。ガイドさんがニュージーランドに来た当初、プライベートで参加した牧場見学ツアーで、「アンガスは、マクドナルドに送られます」と聞いて驚いたそうです。ヘレポードは、顔だけが白くて、体は黒か茶色です。ちなみに、ヘレポードは、ジブリ映画「千と千尋の神隠し」に出てくるカオナシのモデルになった牛と言われています。また、ロトルア近郊のワインガス地方は、火山帯の上に町があるので、土壌がとてもよく、牧草の質も良くなります。そういう牧場で育った牛から作られる乳製品は、とても濃厚でクリーミーなので、ブランド化されています。スーパーなどで見かけると、周りの商品より少しお高く売られていたりします。
 バスは、北の方向に向かって走って行きます。ニュージーランドは、自然第一の国です。自然が保護されて残っています。緑を守るために、いろんな取り組みがされています。環境破壊なんてもったいないというのが、この国の考え方です。美しい自然が写されている映画は、たいていニュージーランドがロケ地になっています。「ロード オブ リング」や「ナルニア国物語」、「ラスト サムライ」など、多くの有名な映画が撮影されています。
 ニュージーランドの電力事情です。環境破壊を防ぐため発電は80%が自然再生可能エネルギーの利用です。全体の50%が水力発電、30%が地熱、風力発電です。残りの20%が火力発電によるものですが、唯一ある火力発電所を年内に一旦休止する方針だそうです。火力発電所は、炭坑の町ハントリーの1か所だけです。しかし、いきなり全面閉鎖して20%の電力がなくなるのは大変なので、現在の石炭利用から天然ガスに切り替えつつ、必要量だけを発電するという計画になっているそうです。電気代が高いので、いろんなところで節電がされています。例えば、歩行者用信号は、消灯式といって、渡る人がいない時は赤も青も消えているんです。信号の1mくらいの高さの所に電源用の押し釦があって、渡る人がその都度自分で電源を入れてから渡るという方式になっているのです。つまり、渡る人がいない時は、電源を切っておけば節電できるじゃないかという考えです。
 バスが今、山越えのトンネルを抜けました。北へ向かって走っています。残念ながらこの日は雨模様で、風も少し出てきました。晴れ男か晴れ女が、雨男か雨女に勝てなかったからだという話も出ましたが、果たしてどうなんでしょうか…()。プホイという街に入ってきました。道の両側は草原で、昨年の11月頃に生まれた子牛だけが放牧されているような牧草地が広がっています。プホイも酪農で有名な町で、日本の若者たちがファームステイ、ホームステイの牧場バージョンをしにやってきている所です。ただ、この町も再開発が進められていて、至る所で工事中になっているとのことでした。
 ガイドさんに、農産物について質問しました。ニュージーランドでは、トウモロコシや小麦、米などの穀物はほとんどを輸入に頼っているそうです。ジャガイモの生産が多いそうですが、新鮮な野菜も結構あるように思いました。ガイドブックにはキウイジュースが美味しいとありましたが、どこで手に入れられますか?という質問も出ましたが、これについてはスマホで調べてもらってもはっきりしませんでした。今から行くファーマーズマーケットで探してみましょうということになりました。
 バスでは、ガイドさんが私たちに少しでも席を立たないようにとか、必ずシートベルトをするようにと、しつこいくらいに何度も言われます。もし違反が見つかると、乗客本人に対して罰金が科せられるからです。事故防止のため、厳しいルールが定められているそうです。その厳しさは、自転車に乗る人に対しても同様で、歩道を走ってしまったり、ヘルメットをかぶっていなかったりすると、100ドルとか50ドルの罰金となってしまいます。監視カメラで撮影されて、通告メールが届いたり、現行犯で見つかったりして、現金払いやカード支払いで罰金を収めることになるそうです。この制度も、子どもを含む家族を第一に考え、事故を防いで安全を重要視するスタイルから発しているのだそうです。
 先住民であるマオリの人たちのことについても教えてもらいました。マオリ族は、タヒチやフィジーといったポリネシアン系の血を受け継いでいる人たちです。昔、ニュージーランドにはマンモスやナウマンゾウのような大型の動物はいなかったため、キウイバードや今はもう絶滅してしまった2mを超える鳥“モア”などの鳥の鳥類を飼って生活していた民族でした。今でもマオリ語は使われています。プホイとかロトルアなどの町の地名はほとんどがマオリ語に由来しています。ニュージーランド航空のクルーたちが使っていた「キオラ」という言葉は、ハワイの「アロハ」と同様で、「こんにちは」とか「ありがとう」という意味のマオリ語なのです。1800年代のイギリスによる植民地化は、マオリにとっては侵略行為になるわけですから、戦いが絶えず起こりました。それを終結させるために、ワイタンギ条約が締結されました。それは、マオリにとって一見好都合な条約のようでありましたが、マオリ語と英語の語訳の違いから、実際はマオリにとって不平等な条約であったという歴史が残っているそうです。マオリ語は、文字を持たない言語でした。日本語のように、ひらがなやカタカナにあたる文字がないので、口承でした。…と、ここまで聞いたところで、バスはマタカナビレッジ ファーマーズマーケットに到着しました。

(2) ファーマーズマーケットからカウリパーク、昼食場所へ
 ファーマーズマーケットを後にし、パリーカウリパークに移動しました。そこで、太古の巨木カウリに触れた後、家族経営のワイナリーの「ランソン ワインズ」で昼食です。ここでもおいしいワインとランチを、おなか一杯いただきました。

(3) 昼食場所からチーズ工場へ
 時間的都合により、ハニーセンターでのはちみつの試食と買い物は行程から省いて、次に進むことになりました。バスでは、先ほどのマオリの話の続きです。マオリ語は文字を持たず、口承という言語の文化だったため、彫刻(マオリケービング)を用いて、歴史や童話や民謡を伝えていました。また、ラグビーのナショナルチーム、オールブラックスが試合前に相手チームを威嚇するために行う、“ハカ”と呼ばれるダンスは、マオリの伝統的な戦いの踊りです。このように、彫刻や踊り、歌を通して、伝統や文化を表現し、受け継いできたのです。発音的には、すべての音に母音があるため、マオリの歌や地名など、日本人には比較的読みやすく発音しやすいことも特徴です。マオリ族は70万人くらいいて、先住民族として世界でトップクラスの人口であり、国民の全人口に対する比率もトップクラスなのだそうです。マオリ族の出生率が2.5人と、他の1.7人に比べ高いことや、小国で島国の中でのびのびと暮らしてこられたことが、人口が増えた理由と考えられます。ただ現在は、混血がほとんどで、純血(ピュア マオリ)は0.8%しかいません。マオリの人たちはニュージーランド中に点在して住んでいますが、ロトルア付近が最も多く住んでいる地域で、マオリの文化も一番根強く残っている所になっているそうです。
 ニュージーランドという国の名前の由来は諸説ありますが、その有力な一説によると、1600年代にオランダの探検家アベル・タスマンがこの地を訪れた時に、彼の出身国にある州の“ジーランド”にすごくよく似ているところから、新しく発見したジーランドという主旨で名付けたと言われているそうです。マオリ語では、「アオテ アロア」といい、白く長い雲のたなびく大地という意味になるのだそうです。
 マオリの人は、女性の身長が170cmくらい、男性は180190cmくらいはあります。肩幅が広く体格がいいです。男性も女性も太った人がよくもてるようで、主食がタロイモのため、炭水化物を多くとるということもありますがダイエットをほとんど気にしません。
 この国のもうひとつの特徴として「オーガニック先進国」ということがあります。オーガニックに関する国の規定がとても厳しくなっています。年に一度、規定が公表され、守られているかどうか調査されます。牛たちも、かなり厳しく管理されています。例えば、かわいそうですが、牛が風邪をひいても薬を射ってもらえなくなります。薬を射った時点で、オーガニックでなくなるのです。なので、病気にならないように厳戒態勢で管理されているのです。また、牧草地も農薬は使われませんし、農薬を使うような土地の近くでは、放牧しないのです。
 学校ですが、義務教育は無償です。就学率もほぼ100%を誇っています。給食は、ほとんどありません。こちらの大抵の生徒たちは、お弁当を持ってきます。11時頃に30分くらいの「モーニング ティー タイム」という休憩があって、1230分くらいにちゃんとした「ランチ タイム」があります。コーヒーや紅茶で食べるような軽食タイプの内容ですが、その両方で食べるために、1.5食分くらいのの量のお弁当をいつも持って来るそうです。日本で英語を教わるような感じで、マオリ語も学んでいるとのことです。

(4) チーズ工場からお土産店へ
 私たちは、オーガニックのチーズやアイスクリームを試食し、買い物もしました。次に向かいます。この時ガイドさんは、ニュージーランドの酪農について説明してくれました。バスが走って来た道路沿いには、牧場主が住んでいる家々があります。各々の家に郵便番号のような56桁の番号がついたプレートが下がっていて、これを目印に、乳業メーカーのトラックが、搾乳されたミルクを回収しにやって来ます。トラックは、タンクローリーかと思うほどの大きなタンクが2連に繋がった大型車で、道路を走っているとよく見かける車だそうです。大手メーカーは、1500戸の酪農家が株主となっている酪農協同組合の形態をとっています。酪農製品は、約140カ国に輸出されており、輸出による総収入額の25%を占めているほどです。牛乳の取扱量の2,200万トンは世界でも最大の量であり、日本の約3倍もあるのです。
 また、いかに牛たちをストレスフリーで飼い、いかに人手を使わずに酪農業をするかということがカギになっています。どうしているかというと、牧場には、体内時計のしっかりしたボスの牛が1頭いて、ボスが搾乳の時間になると動くことによって、他の牛たちもつられて一列になって搾乳機のある所へやって来ます。牛たちは、自ら搾乳庫に入って搾乳されます。搾乳が終わった合図として、パチャッと頭に水がかかるようになっています。すると、牛はちゃんと自分で前に進んで行くのです。そういう自然のベルトコンベアーのような仕組みが出来ているのだそうです。そうなると、酪農家の人たちの仕事は、やって来た牛に搾乳機をつけたり外したりすることだけになってしまうように思えますが、実は、最初にボスの牛を見極めることで、このコンベアーのシステムを作ることが最も肝心な仕事になるというわけです。こういうシステムで、搾乳が一日2回行われています。
 他にも、真ん中に公道が通っているため、牛が通るためのトンネルがほられている牧場があったり、搾乳機のある建物を中心に、平均6つの牧草地があるので、放牧する場所をローテーションしたりするようです。ニュージーランド人が人生の夢や目標として掲げているステータスとは、家族で農場経営をすることなのだそうです。一方で、貧しくて朝食を食べられない子どもたちに牛乳を無償で配る取り組みもされていたなどの話もありました。
 マオリについてもう二つ。ひとつは、挨拶の仕方の話です。伝統的な挨拶として、“ホンギ”があります。握手をしながら、お互いのおでことおでこ、鼻と鼻を2回近づけるのがホンギの挨拶の仕方です。「敵意がありませんよ」、「同じ空気を共有している人間ですよ」という意味が込められているのだそうです。もうひとつは、マオリには、鉄と車輪の文化がなかったという話です。船が木製です。マオリ族が、かつて海を渡ってきたカヌー“ワカ”は、大きな一本の丸太をくり抜いて作った舟だったし、そのカヌーを海へ運ぶ時は、車輪がなかったのでみんなで担いでいったのだそうです。カヌーのつなぎ部分は、穴をあけてロープで縛っていたので、穴から水が入ってきます。そのため、川や海の漁に出かけるときは、3050人くらいの乗組員の中の何人かは、水をかい出すための乗組員だったという記録が残っているとのことです。今では、国としてマオリ族を守る取り組みがされており、例えば、マオリの伝統彫刻学校というのもあります。日本人でそこにかよっている人もあるそうです。
 マオリの人が、昔から薬として使ってきたもので、有名なお土産のひとつとして知られている「マヌカハニー」というはちみつがあります。マヌカは、小指の爪くらいのすごく小さな花と、針のような細かい葉っぱが特徴的な木です。マヌカハニーには、プロポリスという抗菌作用のある成分が含まれているので、風邪の予防から、ピロリ菌を撲滅して胃ガン対策のために舐めるというような人まであります。少し苦みのある味が特徴です。抗菌作用のある成分のため、やはりちょっと癖のある味になっているのです。この抗菌作用は、レベルによって強さに違いがあり、レベルの低いものは喉元の消毒に適し、強いものになると腸まで作用が届くといった具合です。ただし、熱にとても弱いため、紅茶などに溶かして飲んでも意味がなく、そのまま舐めるのが最も効果的です。スプーン一杯分を毎日続けることが大切だそうです。オークランドの中心街でバスを降り、お土産物屋さんに行きました。買い物の後は、明日の帰国に備えての朝の出発時間を聴きながら、バスでホテルに向かいました。

5. 5日目、帰国の日、211日(日曜日)
(1) ホテルから空港へ
 まだ暗いホテルの前でバスに乗り込みます。運転手さんは、昨日までの人と交代しましたが、ガイドさんは今日もさわやかで元気な声です。空港についてからの行動を説明してもらううちに、ほどなく空港に到着しました。
 荷物ですが、ワインなどの液体やはちみつなどの液状の物、刃物類は、大きな方の荷物に入れて預けなければなりません。チーズも、機内は温かいので預けるほうが良いとのこと。逆に、充電池を使うパソコンやタブレット、スマートフォンなどは預けることはできなくて、機内持ち込み物となります。また、預ける荷物はひとり23kgまで、機内持ち込みは7kgまでです。空港入り口の秤で測ると、私の預ける荷物は8kgでした。
 最後に、ガイドさんも入った全員で、集合写真撮影をして、空港に入りました。この時、ガイドさんとゆっくり別れを惜しむタイミングをつかめずじまいとなり、すごく残念…!(泣)()

6. おわりに
 本当に楽しく、思い出に残る旅行になりました。ずいぶん前からきめ細かく準備を進めていただいた三重豪NZ協会長ご夫妻さん、現地旅行者の方、ガイドさんと運転手さん、そして、一緒に旅した皆さん、皆さんに感謝です。ありがとうございました。
 旅行から帰ってから、もうかなりの日数が過ぎました。それでも旅行中の記憶というのは、いつまでも思い出せるものです。帰ってからの日々の記憶はあいまいなのにね…。それが旅のすごい処なのかなと思います。
 随分と長い文章になってしまいました。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。皆さんも、是非思い切って旅にお出かけください。

                           20182月から3月作成

筆者紹介 58歳 男性。2年前に教員を退職、JRPS三重本部役員、度会町スポーツ推進委員。趣味は海外旅行番組・記録。フォークギター演奏と作詩作曲。










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